ネパール人技能実習生の企業配属に同行して見えた“育成の本質”
1.研修を終え、いよいよ企業配属へ
日本に来て1か月が経過した3名のネパール人技能実習生が、研修期間を終え、いよいよ企業配属を迎えたのである。組合担当者とともに新しい職場へ向かい、新住所への転入手続き、研修中に開設した銀行口座の住所変更、通帳を使ったATM操作の指導など、日本で生活するうえで不可欠な実務的サポートを一つひとつ確認しながら行った。
午後からは企業配属先近くのアパートへの荷物搬入を行い、生活に必要な道具や研修で使用する服装の買い出しにも同行した。そこには、すでに日本で働いている先輩ネパール人実習生も加わり、新人たちの不安を少しでも軽くしようと、時間を惜しまずサポートに徹していた。言語、生活、仕事、そのすべてにおいて「先に経験した者が後から来る者を支える」という連帯意識が自然に形となっている現場であった。



2.1週間の同行で見えた生活習慣の変化
今回、3名の企業配属に合わせて、私自身も1週間にわたり彼らの生活と実習に同行する機会を得た。日本という異文化の中で、彼らがどのように暮らし、どのように悩み、どのように成長していくのかを自分の目で確かめたいという思いが以前から強くあったからである。次に来日する学生たちのために、現場で見たことを具体的な言葉としてネパールにいる学生へ伝えるためにも、机上ではなく実体験が不可欠であると考えた。
同行中、特に印象的であったのは毎朝の習慣である。彼らは自分たちでカレーを作りながら、同時に部屋の掃除を行っていた。これは私がいるからではなく、ネパールにいる段階から掃除や整理整頓について厳しく指導を受けてきた結果として身についた習慣である。
香辛料を多用するネパール料理は、調理方法によっては部屋に匂いが残りやすい。そのため、換気扇を回し、窓を開けて空気を入れ替えながら料理をすることを、ネパールで徹底的に教え込まれてきた。こうした生活面の指導が、来日後の「当たり前の行動」として自然に表れていることに、送り出し機関としての教育の重要性を改めて感じたのである。


3.現場で磨かれる日本語力と仕事の理解
実習の現場では、先輩ネパール人女性実習生が新人たちに道具の名前を一つひとつ教えていた。もちろん日本語である。仕事中は可能な限り日本語を使うことをルールとしており、日本語で指示を受け、日本語で返事をすることで日本語運用能力をさらに高めることを目的としている。
専門的な用語や理解が難しい内容についてはネパール語で補足説明を行うが、今回の3名は来日前に日本語学習を相当程度積み重ねてきているため、現場でのコミュニケーションに大きな支障はなく、指示にもほぼ問題なく対応できる状態であった。

4.日本の農業現場に息づく“細部へのこだわり”
1週間の同行を通じて強く感じたのは、日本の農業現場における技術と感覚の「細部へのこだわり」である。道具の扱い方、作業の順序、動作の丁寧さ、安全確認の徹底など、一つひとつの行為に意味があり、それらが積み重なって「品質」と「信頼」を形成している。
この感覚をネパールで勉強を続ける学生たちに必ず伝えたい。来日前の段階で、言葉だけでなく、常識、仕事に対する意識、身体の使い方、動作の丁寧さを徹底的に教え込むことが、今後のネパール人技能実習生にとって不可欠であると痛感した。
5.送り出し機関が果たすべき責務とは
ネパールの社会や職場環境では、まだまだ「日本では絶対にありえない」と言えるレベルの細やかな配慮や規律が十分に共有されていない部分も多い。しかし、日本の企業は単なる労働力としてではなく、「共に品質を作り上げる仲間」として技能実習生を受け入れている。
その期待に応えるためには、送り出し機関や日本語学校が、学生を「日本の現場に通用する人材」にまで育て上げる責務を自覚しなければならない。企業側からの要求は年々ハイレベルになっており、日本語能力、報連相、時間厳守、整理整頓、安全意識、チームワークなど、多岐にわたる要素が求められている。
来日前教育の質が、そのまま企業からの信頼の度合いに直結するのである。
6.同行を通じて得た確信
今回の1週間の同行は、単なる視察ではなく、送り出し機関としての覚悟を新たにする機会であった。現場で見た行動、指導、工夫をネパールの学生への具体的な教育内容として落とし込み、来日前に徹底的に教え込むこと。それこそが、ネパール人技能実習生の未来を切り開き、日本の企業からの信頼をさらに高めていく唯一の道であると確信する。
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