―企業が知るべき現地の実情と、見極めるべき本当の日本語力―
日本企業がネパールからの特定技能人材を積極的に受け入れていた時期から一転し、近年は募集が大幅に減少している。 外食分野(特定技能)のビザ受け入れ停止が影響していることは確かである。 しかし、それ以上に企業側が懸念しているのは、ネパールから直接入国した人材の日本語力や職務理解の不足である。
この問題は個々の学生の資質ではなく、ネパール全体の教育環境・学習文化・送り出し構造が抱える課題として捉える必要がある。
■ 無料化が進む日本語教育と、学習意欲の分断
ネパールでは「無料で日本語を教える」と広告する学校が急増している。 無料であるがゆえに、学習意欲が十分でない層の学生まで大量に流入し、結果として以下のような現象が広く見られる。
- 授業欠席が多い
- テストを実施しても成績が伸びない
- 実践的な日本語運用能力が育たない
- 暗記中心の面接対策に偏る
ネパールはもともと“勉強する国民性”が強い国ではなく、日本を目指す学生層も、学力的には中間〜下位層が多い。 そのため、学習意欲の差が極端に表れやすい構造になっている。
■ 暗記面接の蔓延と、企業が感じる「期待とのギャップ」
ほとんどの学校では、企業面接に合格するための想定問答が出回り、教師が模範解答を教え、学生はそれを丸暗記する。 日本人講師を招いて敬語を教える学校もあるが、返答はどれも似通い、本人の考えが伴わないばあいがほとんどである。
- N5級レベルの学生でも難しい敬語を使う
- 理由を含んだ長文で説明できない
- 質問の言い換えに対応できない、言葉を変えると急に話せなくなる。
- YES/NOで表せるような1単語で返す学生が多い
企業が「日本語ができる」と期待して採用すると、入国後に大きなギャップを感じることになる。
■ 日本で見かけるネパール人学生は“例外”である
日本のコンビニ等で働くネパール人留学生は、半年以上の授業を経て一定の日本語力を身につけている。 その姿だけを見て「ネパール人は日本語習得が早い」と誤解されることがあるが、これは現地の実情とは大きく異なる。 日本の日本語学校で厳しく教育を受けた結果である。
ネパール国内で学んだ学生が、同じレベルで会話できるケースはほぼ皆無である。
企業がこのギャップを理解しないまま採用すると、ミスマッチが生じやすい。
■ 一方で、ネパール人材が持つ“強み”も確かに存在する
ネパール人材には、企業が高く評価している特性も多い。
- 温和で協調性が高い
- 不満を表に出しにくく、職場トラブルが少ない
- 生活面でのルールを守り、部屋をきれいに使う学生が多い
- こうした特性は、職場の安定運営に寄与する重要な要素である。
■ 本当に伸びる学生は「暗記」ではなく「実践」で学ぶ
日本語力が伸びる学生には、明確な共通点がある。
- 目的意識がはっきりしている
- 授業以外でも日本語に触れる習慣がある
- YouTubeや会話練習など、実際の日本語に触れる時間を自ら作る
- 暗記ではなく「会話の内容を理解して話す」姿勢がある
今回紹介する学生のように、日常的に日本語を聞き、話し、実践的に身につけた学生は、会話が自然でコミュニケーションが取りやすい。 多少の文法ミスがあっても、意思疎通がスムーズで、企業との関係構築がしやすい。
■ 企業が面接で確認すべき“本当の日本語力”
ネパールの現状を踏まえると、企業は以下の点を重視すべきである。
- 暗記回答ではなく、学生本人の言葉で説明できるか
- 想定外の質問に対して、意味を理解して返答できるか
- YES/NO だけでなく、理由を添えて話せるか
- 長文での説明が可能か
- 日本語の聞き取りが自然にできるか
特に、似た質問を言い換えて投げかけることで、暗記ではない本来の日本語力を確認できる。
■ 結論
ネパール人材の採用は、適切な選抜を行えば大きな成果を生む可能性がある。 しかし、現地の実情を理解せずに「日本語ができる」という表面的な情報、思い込みだけで判断すると、ミスマッチが起こりやすい。
企業が求めるのは、 “暗記ではなく、理解して話せる学生” “目的意識を持ち、自ら学ぶ姿勢のある学生” である。
その見極めを丁寧に行うことで、ネパール人材は企業の大きな戦力となり得る。
今回、ネパール人材に関する否定的な文章に感じたと思うが、企業は利益をもたらすことが最優先であるため、リスク管理の視点でネパール人材を見ることが非常に大事である。 極端に言えば、彼らが持っている良い点は何もしなくてもあり続け、マイナス点を理解してしっかりと対応をすれば、企業にとって強力な人材になりえるからである。