ネパール人材教育の現実と、改善に向けた10年の取り組み
ネパール人材の日本語教育に携わり、まもなく10年になる。
その中で痛感してきたのは、学生・学校側の言い訳の多さと、学習に対する甘さである。
学生は日本に楽に行ければ良い。 学校は日本に送れば良い考えで運営をしている現状である。
ここでは、現場で実際に起きている問題と、それに対して行ってきた私たちの改善策の経緯をまとめたの
で、御社とかかわりを持つネパールの日本語学校や送り出し機関との関係に役立ててほしい。
■ 出席管理の形骸化 ― “来ていること” と “学んでいること”の乖離
他国の学生のように、日本語力を計画的に伸ばすため、当初、ネパールの日本語学校側に出席管
理を依頼したが、現状を知っている学生・学校ともに難色を示した。
送り出し機関や学校は渋々納得し、授業等を行ってきたが、来日した学生の日本語力が全くない
ことがわかり、原因を調べた。
すると・・・
• 日本語学校の指示で、授業に来ていなくても「出席扱い」にする
• 日々行う小テストも甘い判断で「合格」にする
という結果がわかり、改善しようと学校や送り出し機関と会議を行うと・・・
• 日本側がチェックすると「生徒が来なくなる」と反発
• 他校がやっていないから自分たちもやらないという姿勢
そのため、日本側から送り出し機関の契約、日本語学校の提携を解消した。

■ 無連絡欠席の常態化 ― 日本では通らない理由が横行
日本からの出席確認を行い、学生は学校に来るようになっても、無連絡で休むことが多い。
よくある理由:
• 雨が降っている
• 渋滞したから
• お祈りをするから
• 田舎に行く
• 母親を病院に連れていく
• 頭が痛い
日本では到底通らない理由ばかりである。
● 改善策
• 無連絡欠席は認めない
• 理由があっても客観的証拠の提示がなければ不可
• 休める回数は最大3回
このルールにより、欠席は大幅に減少した。約束を守れない学生は私たちの育成レールから外すことにした。

■ 家庭学習をしない問題 ― 復習テストで習得度を可視化
授業には来ても、なかなか日本語力が伸びない。 彼らの一日について、確認を取ると家で勉強しない学生が多いことが分かった。
改善策
• 毎朝、前日の復習テストを実施
• 習得度を数値で把握
• 結果によって下のクラスへ移行、またはキャンセルを行う
•
これにより、学習の定着状況が明確になり、確認試験を行うことで成績の向上が見られた。
■ N5試験を受けたがらない ― “落ちるのが怖い”という理由
学生も学校も「早く日本に行くこと」しか考えていないため、企業面接に言葉のわからない学生が多く参加してきた。 N5合格が企業面接の最低条件のひとつ伝えると、強い抵抗があった。
受験しない理由は・・・
• 落ちるのが怖い
• お金がかかる
• 他校ではそのようなことをしていない。
地方の学校は早期のN5級取得者を得るためには試験実施状況が低い
• 地方は試験回数が少ない
• 試験者が少ないと、試験が流れる
• 結果発表が遅い(1か月以上かかる)
● 改善策
• カトマンズでN5級試験の強制受験
• 試験の申し込みを送り出し機関が行い、確実な申し込みを把握
• カトマンズではほぼ毎日受験可能
• 結果は1週間で判明
これにより、受験率が安定し、N5級合格者がアップ

■ 会話力不足 ― 暗記教育の限界
一部の学校では面接練習を取り入れ、企業面接に合格させるために、答えを丸暗記させるだけの指導が行われている
その結果、
• 面接で応用が効かない。 暗記できていない質問には答えられない
• 企業側は「本当の日本語力が見えない」と困惑
改善策
• 企業面接に受けられる学生かどうか日本人が直接、日本語力を確認
• 暗記では答えられない質問で実力を判断
• 合格レベルの学生のみ企業面接へ(オリジナルな言葉、⾧文での返事)
• 学生・学校から「厳しすぎる」と不満がでたが、日本人による合格が必須となったため、勉強が大切である旨を理解させた。
企業からの信頼度は大きく向上し、他国同様のレベルに近づいた。
■ N4合格の義務化 ― 地方学生の反発と学校の二枚舌
日本に行く前にN4合格が必須であるため、合格できない学生はカトマンズで勉強させる方針にした。
すると、
• 地方学生から「厳しい」「費用がかかる」と不満
• 学校は日本側に対して「問題ない」と言い、
学生にたいしては「地元で勉強できる」と説明する二枚舌を使い、その場をしのぐことが出た。
● 改善策
送り出し機関が方針を統一し、
• カトマンズでの集中学習を義務化
• 地方学生のための安価なホステルを準備
• 終日、学習に参加できるカリキュラムを作成
• 出席管理・小テストを徹底
これにより、育成計画がようやく安定し、入校からN4級取得までの道筋ができた。

■ まとめ:日本に行くことが目的ではなく、“働く準備”が目的であるべき
ほとんどの学生や学校は、「日本に行くこと」だけをゴールにしている。
しかし本来必要なのは、
• 日本で働くための日本語力
• 生活力
• 職場でのコミュニケーション能力
これらを理解し、
信頼できる日本語学校・送り出し機関と連携することが、優秀なネパール人材の発掘につながり、御社での人材確保に有利に働く。 彼らの住環境でのトラブルも大幅に減り、いい雇用環境に繋がると思う。 逆に言えば、ここまでしなければネパール人材を育成できないということであり、他国の学生と比較してどうかである。
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